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ポケットに教育基本法の会 NEWS LETTER 第7号
2008年12月5日
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〈TOPICS〉
★教基法訴訟・控訴審、第2回につなぐ!
10月28日、東京高裁にて、控訴審・第1回口頭弁論が行われました。
10名の傍聴者が集まってくださり、心強かったです。どうもありがとうございました! 私たちは約30分にわたり、首尾よく口頭で陳述、被告の書類不備等もあり第2回につなぐことができました。傍聴者にも「わかりやすい」と好評でした!
一方、「傍聴者が少ない。良い弁論だったのにもったいない」との声もあり、次回はもっと、皆さまにアピールしなければ、と気持ちを引き締めています。
傍聴をお願いします!
次回期日:2009年1月27日(火) 午後2時~2時30分
東京高裁809号法廷 霞ヶ関A1出口すぐ
ヒラメ裁判官による一審判決を不服とし、またヒラメ裁判官に訴える私たちって?! 「改定教育基本法は憲法違反である」。
私たちは、ヒラメでも何でも、言いつづけます!
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控訴審・第1回口頭弁論報告
2008年10月28日、教基法訴訟の控訴審第1回口頭弁論が行われました。
控訴人(私たち)側は代表4名(城倉・渡辺・高瀬・富盛)が法廷に入り、被控訴人は弁護士ら7名が出廷。35分間にわたって弁論が展開されました。
しかし、予想通り裁判官は合議に。やはり審理しないで結審かと思いきや・・・?! 出廷した渡辺さんによるリアルな報告をどうぞ!
◆裁判長が名乗った!もしかして人間?
東京高裁809号法廷。裁判官は、裁判長・原田敏章、氣賀澤耕一(右陪席)、加藤謙一(左陪席)の3名。裁判官は、開始予定時刻2時前に入廷しましたが、6名の被控訴人(国、自民党国会議員4名、公明党国会議員1名)のうち公明党国会議員の答弁書が、私たち4名の代表のうち3名に届いていないことが分かり、その確認のため、5分ほど時間を取られました。また被控訴人代理人のうち数名は遅刻し、2時5分、開廷が告げられました。
今まで、私たちは、第1回の時は開廷と同時に「すみません」と手を挙げ、裁判長が口を開くよりも先に自己紹介を求めていたのですが、何やかやと理由をつけて拒否する裁判長が多いため、その時間がもったいないということになり、今回は黙っていました。
すると原田裁判長は初めに私たち4名の名前を一人一人確認し、期せずして自己紹介したような形になりました。こんな裁判長は初めてです。
「ていねいな人だな。もしかして・・・」と、ちょっぴり期待感が膨らんできましたが、「いや、だまされてはいけない」と打ち消しました。なにしろ、今までの裁判官がひどかったからです。
「この裁判長なら」と思い、私は「外の表には裁判官の名前が4つ書いてあったので、3人のお名前を教えていただきたい」とお願いすると、裁判長はごく自然に、「原田です。(右陪席を指して)氣賀澤です。(左陪席を指して)加藤です」と教えてくれました。
これが普通の人間の対応です。さわやかでした。この前の裁判長は裁判官の名前の読み方がわからないと言っているのに(「長」さんは、「おさ」さんなのか「ちょう」さんなのか?)完全に無視したのです。
原田裁判長は「控訴人は控訴状、被控訴人は答弁書を陳述しますね」と言いました。城倉さんが「ちょっと待って下さい、口頭で陳述する時間を取ってくださっていますよね」と確認すると、「あとでまとめてやって下さい」と言いました。被控訴人のうち答弁書未送達の代理人は「口頭で棄却します」と言いました。
◆ 一審の審理不尽を指摘、抽象的憲法判断の必要性を訴える
それから裁判長は「口頭で陳述してください」と私たちに言い、城倉さんが控訴理由書の要点を陳述。
たった1回の口頭弁論で結審した地裁判決は原告らの主張に対する誤解を前提に議論を組み立てており、取り消されるべきであるとし、まず審理不尽の4点を指摘しました。
(1)被告太田明宏は答弁書において、訴状の「請求の趣旨」のうち改正教育基本法の憲法違反及び結論に対して「主張はすべて争う」としているのに、審理しなかった。
(2)原告は訴状及び準備書面(5)において、「やらせタウンミーティング」の違法性を主張したのに、なんら審理しなかった。
(3)原告が主張した改正教基法の違憲性について、何ら審理しなかった。
(4)原告、被告双方が引用し、主張が対立している「警察予備隊訴訟最高裁大法廷判決」について審理しなかった。
次に、城倉さんは原告らの主張に対する事実誤認について述べました。
原判決には「教育基本法の内容が原告らの政治的思想信条に反するものであり、原告らがその内容に不快の念等を抱いたとしても」とあるが、原告らは改正された教基法は憲法の内容に反しており、教基法改正は違憲立法行為であると主張しているのであり、裁判所としては「改正教基法が現憲法に適っている」と判断するならば客観的に条文に照らして判断すべきであるとしました。
さらに、今年の4月に名古屋高裁で出た「自衛隊のイラク派兵違憲判決」において相当程度抽象的な憲法判断は、政府のなし崩し的解釈改憲の歴史に歯止めをかける司法の快挙であったとし、憲法81条に定められた違憲立法審査権は抽象的憲法判断をも含むものであると主張しました。
教基法が改正されたことによって、教育関連3法が改正され、国の権限が復活され、教員への管理強化がすすみ、また、2008年4月に改訂された学習指導要領は道徳教育を重視するように変えられ、国家の「あるべき教育」を家庭に押し付けるものであると主張しました。
◆憲法76条を忘れた裁判官、目を覚まして!
次に私が、第1回口頭弁論にあたって、公正・中立及び適正な訴訟指揮を求める準備書面(1)を陳述しました。
日本国憲法76条3項は、「すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」と定めています。
ところが私たちがこの間起こしてきた6つの裁判(杉並教科書裁判等)で、裁判官は憲法のこの条文に違反し、法律を勝手解釈し、まともに審理もせずに門前払い判決を下してきました。
私は裁判官の顔を見ながら、裁判官にこの条文を思い出してもらい、良心を取り戻してもらうため、祈るような気持ちで陳述しました。
◆母親原告、改定による生きづらさ切々と
次に富盛さんが、小学生の子どもを持つ母親の立場から、準備書面(2)を陳述しました。
2008年3月に改定された新学習指導要領は、「日本会議」などの政治家の圧力によって中央教育審議会の答申から大きく変更されてしまったが、それは47年制定教育基本法が禁じていた「教育への不当な支配」を、改正教育基本法が許してしまったからであること。
新学習指導要領によって個人の思想信条の自由を踏みにじる愛国心の強制、国家のための個人を作ろうとする目標の設定が行われたこと。
そして学校から頻繁に新学習指導要領を解説した冊子や国家の考える「あるべき教育観」を押し付ける内容の小冊子が配られ(証拠として提出)、そのたびに精神的苦痛を感じ、子どもには、なぜこれらの冊子が間違っているかを説明しなければならず、大きな損害を被っていると、よく通る声で真剣に訴えました。
子どもを持つ母親の危機感がひしひしと伝わってきました。
◆証人申請と進行協議を求め、裁判所の真実究明義務を訴える
最後に控訴人の高瀬さんが、準備書面(3)を陳述しました。
富盛さんの訴えた新しい損害が発生したこと、証人尋問の必要性が不可欠であることから、進行協議を求めるとしました。
民事訴訟法243条1項では「裁判所は訴訟が裁判をするのに熟したときは、終局裁判をする」と定められており、「裁判をするのに熟した」とは、客観的に「熟した」時が必要なのであって、裁判所が真実究明義務を怠り、門前払い判決をしようとして結審する場合は、説明責任が生じると述べました。
その場合、裁判官は裁判をすること自体を放棄したに等しく、忌避されることを受忍しているものとみなされるとしました。
◆やっぱり合議。結審かと思いきや?!
陳述を終えると、裁判長は「合議します」と言いました。そこで、すかさず城倉さんが「何を合議するのですか?」と聞きました。すると裁判長は「それは言えません」と答え、扉の後ろに消えました。
私たちは合議に入ったら、結審と考え、忌避することに決めていました。しかし、裁判官たちはなかなか出てきません。こっちも合議です。
「長いね。どうしようか?」「でも絶対結審しかない。やっぱり忌避しよう」ということで、裁判長が扉を開けた瞬間、忌避うちわを掲げて、「裁判官を忌避します」と申し立てました。
以前、忌避した時、結審前の忌避なのに、結審後の忌避にされてしまったので、目立つように忌避うちわを作ったのです。
しかし裁判長は忌避を無視して、「証拠申出書(証人喚問)を却下しますが、むにゃむにゃ(理解不能)」と言いました。私が「わかりません。もう一度言ってください」と言うと、「証拠申出書を却下しますが、代わりに書面を出してもかまいません」と言いました。
え!結審じゃないの?と驚いていると、裁判長は答弁書未送達だった被控訴人に答弁書を送るよう指示しました。
私は、「あ、そうか。答弁書未送達だから結審できないのか。これは瓢箪から駒だな」と思いました。裁判長はそんな私を見透かすように、「証人尋問を却下しましたので、控訴人には尋問の代わりに何か提出する機会を与えます。また、答弁書に反論する機会を与えます」と控訴人に機会を与えると強調しました。
答弁書未送達のせいで結審できないことを隠しておきたいのだろうと私は思いました。
被控訴人のチョンボだとしても、弁護士と裁判官はオトモダチ、こんなつまらないミスで専門家たるものが素人に負けたと思いたくなかったのかもしれません。
そして次回期日を1月27日(火)午後2時からとして閉廷しました。
◆傍聴者の感想
閉廷後、報告会を行いました。良い口頭弁論だったのに傍聴者が少なくて残念だったという意見が多く出されました。以下、傍聴者の感想です。
「35分間にわたるすばらしい陳述でした。合議ということで、もうだめかと思いましたが、証人11人は却下したものの、次回につなげた。一審の審理不尽を徹底的にたたいたのが効いたのでしょう」(Tさん)
「一審は馬耳東風だったが、今回はそうでもなかった。裁判はやってみないと分からない」(Kさん)
「傍聴者が少ない。良い内容だったから、もったいないです」(Iさん)
「加藤謙一裁判官(左陪席)は、眠くて眠くてたまらず、必死になってまばたきして眼を開けようとしていた」(Kさん)
「裁判は全部ビデオに撮って見られるようにするなど、傍聴者のみでなく日本全国どこでも何らかの形で見られるよう公開すべきだと思う」(Kさん)
「裁判長は、聞こうとする態度が今までの人よりずっとよかった。でも、加藤裁判官は、半分寝ていた。原告の主張は分かりやすくよかった。現役の母親としての主張は感動した」
「被告弁護士の少なくとも1名も、居眠りしていた。答弁書が出ていないのに合議のうえ打ち切りならオドロキ!!一応次回期日が入ったが、次回打ち切りの予告かもしれない。ねじれ国会は空転状態。国会議員への働きかけも有効なのでは」(Tさん)
「今までも数回法廷に入る経験がありましたが、この裁判を通じ、改めて官営裁判の中味のない無味乾燥な形式のやり取りと進行、裁判の在り方に、疑問と不信を持ちました。権力の横暴に立ち向かうため、今後も辛抱強く、あきらめず、あらゆる機会に、小さな声でもあげ続けることの大切さを痛感しました」(Bさん)
「一審判決の脱漏を挙げる論が明解でした。私が裁判官なら全く肯いてしまう。『法律上の具体的争訟性あり』『原告の訴えを無化している』。同感です」(Oさん)
また、法廷に来られなかった原告Mさんからの手紙が読み上げられました。私たちはとても勇気づけられました。ありがとうございます!
<原告からの手紙(抜粋)>
「私は、現憲法に対する改変されてしまった教基法というのは、いずれ廃棄されるべきものと思っていますし、言ってみれば、洋装に下駄ばき同然の、陳腐そのものの、底知れぬ腹黒さを秘めた、性悪のものと思っているのです。
何はともあれ、問題の重大性からいって、これをたった一回の審理で片づけてしまった裁判官に激しい憤りを感じます。
けっこうな報酬を受けておきながら、こんな出鱈目しかやってない者は、ヒラメどころか、立派な公金泥棒と言うべきでしょう」(Mさん)
★★★ Pocket Column ★★★
今は門前払いでも、みなさまに支えられて行う先駆的な裁判!
――― 原告・渡辺
「教育基本法の裁判、やってる人でしょ?」
ある集会で、一人の男性から声をかけられました。
「は、はい(誰だっけ?)」
「原告になったYです」
と、名刺を下さって、やっと思い出しました。
「すごいよね。ニュースレター、いつも感心して読んでいますよ。僕は弁護士事務所に30年も勤めていました。弁護士もなくあれだけやってるんだからすごい。でも、どうせやるなら東京地裁以外でやりなさいよ。東京地裁はだめ。地方の方がまだ可能性がありますよ。・・・今は岐阜に住んでいます。東京の空気は腐ってるね・・・」
顔を覚えていて声をかけて下さるなんて感激です。Yさん、ありがとうございました。
また、先日、次のようなメールをいただきました。
「Wさんは、すごいと思います。Wさんの活動は、この時代で先に生まれてきた者として、後に続く若い世代のために責任を果たそうとするものだからです。たくさんの人の記憶に刻まれていると思います」
そして友人との会話の一部より。
私:私たちが何やっても何も変わらない…、空しくない?
友人:でも反対した人がいたっていうだけで違うと思う。
私:戦争中もそうだったしね。将来、歴史の教科書に載るかもね。そしたら未来の人たちが勇気づけられるかも。
友人:今だって勇気づけられている人はいるよ。
それから、控訴審第1回口頭弁論に来てくれた傍聴人のお一人が、富盛さんに「教育基本法が改悪されてしまってからもあきらめないで裁判官に直接意見を言ったのは日本中の母親の中であなた一人。どこかに書いて大勢に知らせなくちゃ」と言ってくださったこと・・・。
傍聴人は少なく、メディアももちろん取り上げず、この裁判のことを知っているのは日本中に数百人しかいないだろう。
裁判所からは相手にされず、今はほとんど知られることもないけれど、将来、日本に本物の民主主義が確立し、三権分立が実体化し、憲法違反の法律を裁く違憲立法審査権が認められたら、その時は先駆的な裁判として研究者によって研究され、歴史の教科書に載ると思う。
その日がいつ来るのか。私が生きているうちに来るとは思えないけれど、いつか来ることを信じて、前進あるのみ。
≪≪Information≫≫
こちらの裁判(全て本人訴訟)の傍聴もよろしくお願いします♪
★ 杉並「つくる会」教科書取消し裁判・控訴審 第2回口頭弁論
2008年12月22日(月)午後1時40分~ 東京高裁511号法廷
★ 和田中夜スペ取消し裁判 第2回口頭弁論
2009年 1月16日(金)午前11時30分~ 東京地裁522号法廷
※地裁も高裁も同じ建物。霞ヶ関A1出口すぐ
◆編集後記
控訴審第一回は、意外な展開にびっくり。裁判長には珍しく、話を聞く態度も見られ、なんと次回もあるというオマケつき(ほんとに、ただのオマケかも?)。
何回目かの訴訟になりますが、つくづく裁判長によって、裁判の雰囲気、進行の仕方がまるで違うことを感じます。
裁判長の裁量で全て決まる。自由って、そういうことなんだなあとも思います。だからこそ、裁判官の良心が問われます。
裁判官が合議に入った時は、てっきり結審だと思いましたが、「第2回がある」と聞いて、私は控訴人席で「???」。答弁書未送達だから結審できなかっただけらしいですが、こんな展開もあるのかと、また一つ勉強になりました。
先日、高校のクラス会で、ウン十年ぶりに世界史の先生だった恩師に会う機会がありました。
先生は、最近の金融経済の破綻の仕組みからサブプライムローンの虚構を5分で語り、「君たちは今、かつてない激動の時代を生きている。しっかり眼を開いて歴史の生き証人になれよ」とおっしゃっていました。
歴史の大きなうねりの中では、私たち一人ひとりは、川底の小石のようなものなのかもしれません。
人間はただ、その波に転がされるだけなのか、それとも、一粒一粒の小石が、ちょっとでも自ら動き出せば、その流れを変えることができるのか。
民主主義の時代と言われて60年、個人が一人で立つことの意味を、いま一度、歴史に問われているような気がします。(富盛)
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次回傍聴をよろしくお願いします!
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次回は、教基法が改正されたために受けた損害をもう一つ準備書面にし、証人喚問を要求していた方に意見陳述書を書いていただき、提出する予定です。
私たちは傍聴者にもわかりやすい、開かれた法廷をめざし、毎回、口頭で陳述する時間を取ってくれるよう交渉しています。次回も30分は時間をとってくれますので、ぜひ傍聴にいらしてください。
★教基法訴訟・控訴審 第2回口頭弁論
2009年1月27日(火)
午後2時~ 東京高裁809号法廷
霞ヶ関A1出口すぐ
カンパのお願い
控訴審第一回公判を終えて、大変盛り上がってきました。一回で結審とさせない奮闘ぶり、この調子で何回でも口頭弁論をたたかわし、原告・被告間の実質審理をし、良い判決をかちとりたいと願います。
原告のみなさんにも、傍聴支援のみなさんにも、熱い『ニュースレター』を逐次お届けしますから、ご期待ください。
ところで、この『ニュースレター』、原告全員に電子メール版と郵便版で配送していますが、一回に約1万円の経費がかかっています。
事務局の手元には、虎の子の34,112円があります。この先、「忌避(三回で約5千円)」「上告(約3万円)」など、物入りが予想されてもいます。
こういうわけで、カンパをお願いします。
いくらでもかまいません。そして、手弁当の本人訴訟運動で歴史を動かしましょう。
立憲民主主義の成熟した社会へと。(事務局・城倉)
<振込み先>
名 義:ポケットに教育基本法の会
口座番号:00100-8-356865
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ポケットに教育基本法の会
事務局:〒174-0063 東京都板橋区前野町4-13-3-301 (城倉)
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